インド、生成AI導入で世界第2位に躍進 – 光と影、そして将来への展望

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インドの生成AI AI

インドが生成AI技術の導入において、米国に次いで世界第2位の地位を確立したことが、2025年8月のレポートで明らかになりました。政府主導によるAI教育の推進や、悲願である半導体産業への本格参入が、この躍進を後押ししています。

豊富なIT人材と巨大な国内市場を武器に、インドは世界のテクノロジー覇権争いにおいて、無視できない存在となりつつあります。

なぜインドは躍進しているのか?その背景

IT人材

インドのIT分野における躍進は、一朝一夕に成し遂げられたものではありません。そこには、複数の要因が複雑に絡み合っています。

まず挙げられるのが、豊富な理数系人材と高い英語力です。インドでは伝統的に数学や科学教育が重視されており、世界トップクラスのエンジニアを輩出し続けています。また、公用語の一つが英語であるため、最新の技術情報へのアクセスや、グローバルなビジネス展開において大きなアドバンテージを持っています。

2000年問題

1980年代からのソフトウェア開発への注力と、いわゆる「2000年問題」が、インドのIT産業を世界レベルに押し上げる大きな契機となりました。

世界中の企業がプログラムの修正に追われる中、インドのエンジニアたちがその高い技術力とコスト競争力で大きな信頼を獲得。これを機に、欧米企業のアウトソーシング先として不動の地位を築きました。

さらに、インド政府は近年、「メイク・イン・インディア」政策を掲げ、国内の製造業、特にIT・半導体産業の育成に国を挙げて取り組んでいます。

2024年3月には、AI分野のイノベーション促進を目的とした「インドAIミッション」を閣議決定し、5年間で1,037億ルピー(約1,800億円)もの巨額な予算を投じるなど、その姿勢は本気です。

躍進の遅れと根深い課題:カースト制度の影

カースト制度

輝かしい躍進の裏で、インド社会には依然として根深い課題が存在します。その一つが、カースト制度です。憲法上は廃止されているものの、人々の意識や社会構造の根底には今なおその影響が色濃く残り、職業選択の自由を阻害し、深刻な格差を生む一因となっています。

しかし皮肉なことに、このカースト制度がIT産業の発展をある意味で後押しした側面もあります。ITという新しい産業は、伝統的なカーストの職業分類に含まれていなかったため、身分に関わらず、意欲と能力のある若者が自らの力で未来を切り拓ける数少ない分野でした。「貧困からの脱却」を目指す多くの若者がITエンジニアを志し、熾烈な競争を勝ち抜くことで、結果的に国全体の技術力を底上げしたのです。

貧困

とはいえ、社会全体のインフラ整備の遅れや、依然として残る貧困、そして育成した優秀な人材がより良い待遇を求めて国外に流出してしまう「頭脳流出」も深刻な課題であり、インドが真のIT大国として持続的な成長を遂げるためには、これらの問題解決が不可欠です。

AIブームの裏側:「人力AI」という笑えない現実

人力AI

AIブームに沸くインドのスタートアップ界隈を象徴する、笑えないニュースも報じられました。マイクロソフトなどから2億5,000万ドル以上もの資金を調達し、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)と目されていた「Builder.ai」社。

同社は「AIがノーコードでアプリを開発する」という画期的なサービスを謳っていましたが、その実態は、AIではなく約700人ものインド人エンジニアが人海戦術でコードを書いていたことが調査報道によって発覚しました。

「AIアシスタント『Natasha』」の裏側は、まさに現代版「オズの魔法使い」でした。この事実はAI業界に衝撃を与え、同社は不正会計疑惑も浮上し、最終的に破産手続きを開始する事態となりました。

この一件は、過熱するAI投資への警鐘であると同時に、インドの豊富な人的リソースを良くも悪くも示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

中国を超え、世界を牽引する存在となるか

中国とインド

2023年には人口で中国を抜き、世界一となったインド。IMF(国際通貨基金)は、今後も主要国の中で最も高い経済成長率を維持し、2050年にはGDPで米国に次ぐ世界第2位の経済大国になると予測しています。

この巨大な「人口ボーナス」とデジタル経済の爆発的な成長が組み合わさることで、インドが中国を凌駕し、21世紀の世界経済とテクノロジーを牽引する存在になるという見方は、もはや夢物語ではありません。

生成AIという新たな潮流をいち早く掴み、国策としてその導入と発展を強力に推進するインド。根深い社会課題を乗り越え、そのポテンシャルを完全に開花させることができれば、世界のパワーバランスを塗り替えるゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。その動向から、今後ますます目が離せません。

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